福井大学医学部附属病院 心臓血管外科 教授 夛田 浩
福井県立病院 看護部 福岡 孝子/笹島 加那江
まちづくり系医師 福井大学医学部地域プライマリケア講座 教授 井階 友貴
福井大学医学部附属病院 神経科精神科 教授 小坂 浩隆
心臓は、生体の血液循環を担う高性能ポンプである。正常であれば、一生の間に約30億回拍動する。そのポンプ機能は心筋の収縮によって生じ、収縮を起こす刺激は、一定間隔で発生する電気信号である。心臓の中には4つの内腔があり、左心房と左心室は血液を全身に送り、右心房と右心室は戻ってきた血液を肺へ送る。心房と心室、心室と血管の間には弁があり、それらの開閉により血流方向を制御している。心臓疾患は、心臓を栄養する冠動脈や全身の血管の疾患、心臓を構成する弁や心筋の疾患、心臓の拍動機能の疾患など数多い。福井大学循環器内科では、虚血性心疾患(狭心症、心筋梗塞)、不整脈、心不全、心臓弁膜症、心筋・心膜疾患、大動脈・末梢動静脈疾患など、心疾患の診療を中心に、成人循環器疾患全般を診療対象とする。
福井県立病院救命救急センターは、重症患者の受け入れ可能な3次救急医療施設である。日本では数少ない北米型ER式救急体制を採用し、軽症患者の診療から重症患者の救命まで24時間365日体制で診療にあたっている。また、本院は令和3年5月に運航を開始した福井県ドクターヘリの基地病院でもある。救急看護師は、救急医療の場で様々な業務を遂行する。センターの来院患者に対するトリアージ、医師の診療補助、CTやMRI検査の補助、血管造影、入院対応、救急病棟での入院患者のケア、フライトナースなどである。ちなみにトリアージとは、個々の患者の緊急性について観察し、治療の優先度を決めることを指す。福岡孝子看護師は、救急看護についてこう説明する。
井階友貴教授が生まれ育ったのは、兵庫県丹波篠山市。四方を山々に囲まれた小さな町だ。子どものころ、風邪やインフルエンザにかかると、おじいちゃん先生が診てくれる診療所へ行く。待合室に居るのも、ほとんどがおじいちゃんとおばあちゃん。和気藹々、楽しげに話をしている。身体が悪くて来ているのに、なぜ、ニコニコしているのだろう」子どもの眼には不思議で奇妙、しかし温かい光景に映った。「それが、たぶん、地域医療に心を引かれた最初だったのではないかな」大学卒業前、地域医療への関心はあったものの、当時はまだ、「全人的に人間を捉え、特定の臓器・疾患に限定せず、多角的に診療を行う総合診療科」は、概念も名前もなかった。
世界保健機関(WHO)は、障害調整生存年(理想的な寿命と比べ、障害や早死で失われた年数。疾患負荷の大きさを示す)で評価すると、2030年に精神疾患が第1位になるという予測を発表した。同じくWHOは、新型コロナウイルス感染症が発生した最初の1年間に、不安症とうつ病の有病率が世界で25%という驚異的な増加を示したと報告している。福井県でも、認知症患者の増加、ならびにストレス社会を反映したうつ病や適応障害が増えている。昨今、精神科外来の敷居が低くなったこともあり、患者数は増す一方だ。