名古屋大学医学部附属病院 病院長 丸山 彰一
愛知県厚生農業協同組合連合会 安城更生病院 病院長 度会 正人
一般社団法人愛知県病院協会会長・日本赤十字社愛知医療センター名古屋第二病院 院長 佐藤 公治
公益社団法人全国自治体病院協議会愛知県支部 支部長・小牧市民病院 院長 谷口 健次
一般社団法人愛知県医療法人協会会長 ・医療法人 済衆館 済衆館病院 理事長 今村 康宏
藤田学園 藤田医科大学 第一教育病院 病院長 今泉 和良
藤田医科大学 岡崎医療センター 病院長 鈴木 克侍
病院長になって、周りの方々にものすごく支えられてきたことにまず感謝いたします。副病院長はじめ、事務方や他の病院、関連病院の先生方とコミュニケーションをとるなかで、名大病院に対する大きな期待や後押しを感じてきました。そのなかで、まず意識したのは経営、財務です。コロナ禍の影響などもあって今、全国の大学病院の7割が赤字経営を余儀なくされています。名大病院も、当初計画で赤字が見込まれていました。病院長になったら、なんとか赤字を出さずに財務基盤を強固にしないといけない。そう考えてきました。しかし一方で、大学病院である以上、難治性の高い疾患や重症患者さんを治す、あるいは高度な医療や新しい治療法に積極的に取り組む社会的な使命もあります。採算や財務はもちろん大事ですが、大学病院にしかできない治療、大学病院だからこそ社会的使命に応えることが大事ではないか。そういう思いも強くありました。
中部経済圏の中心地、名古屋市から高速3号線を南東に向かって走る。目的地までは、距離にしてざっと30キロメートルほどだろうか。渋滞さえなければ、豊明、東刈谷を経て、安城市まで40分ほどでたどりつける。高速から一般道に乗り換え、さらに15分ほど進むと、やがて地上9階建ての安城更生病院が姿を現わした。正式名は、愛知県厚生農業協同組合連合会安城更生病院。ベッド数771床、約2000名の職員が働く地域の中核病院である。
安城市は人口約19万人。豊かな水と平らな地形を生かした農業先進都市として知られる。稲作を中心に麦、野菜、果樹、養鶏など多角的な農業を展開、優良農業地帯を形成していることから“日本デンマーク”とも呼ばれている。
全国の医療機関ではいま「地域医療構想」に視線が注がれている。厚生労働省が超高齢社会に耐えうる医療提供体制を構築するため、2014年に制度化された。構想は、将来人口推計をもとに2025年に必要となる病床数を「高度急性期」「急性期」「回復期」「慢性期」の4つの機能に集約し、地域の協議を通じて病床の機能分化と連携を進め、効率的な医療提供体制の実現をめざす。背景には、医療人材の担い手不足や、医療費を含む社会保障費の負担増による国の財政危機がある。果たして機能分化や体制の再構築は、進むだろうか?
大変な任務を仰せつかり、責任の重さを痛感しております。病院長は、あたりまえですが病院全体のこと、経営のことなどを常に考えていかないといけないので、心の準備はしていたつもりですが、実際になってみて感じる重圧は大違いです。早く慣れてしっかりと職務を果たしていきたいと考えています。とくに変わったことはありません。藤田学園の建学の精神である「獨創一理」に基づいてさらに高度な医療、治療を患者さんに提供すること。藤田医科大学病院の病院理念「我ら、弱き人々への無限の同情心もて、片時も自己に驕ることなく医を行わん。」に則り、最大限、患者さんの気持ちに寄り添い、提供する医療のレベルを高めていこうと。職員やスタッフの皆さんが迷ったとき、困ったときに、この理念に立ち戻り、間違っていないかどうかを判断する。そういうことが大事ではないかと話をさせていただきました。
真新しい病院の正面玄関をくぐると、透明なガラスの壁に貼られた1枚のポスターに目が留まった。2025年6月に劇場公開された映画「フロントライン」の宣伝ポスターだ。
いまから5年前の2020年2月3日、日本で初めて新型コロナウイルス感染症の集団感染が発生した豪華客船「ダイヤモンド・プリンセス号」を覚えているだろうか?
映画「フロントライン」は、その客船を舞台に、日本が治療法不明の未知のウイルスに直面し、その最前線で闘った医師や看護師、官僚などの姿を、実話を基に描いた物語だ。
この時、ダイヤモンド・プリンセス号とともに、現実世界で一躍、有名になった病院がある。藤田医科大学・岡崎医療センターだ。完成したばかりで、病院としてまだ機能していないにもかかわらず、一夜にして全国の視線を浴びたのだ。